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東京高等裁判所 昭和60年(ネ)2223号 判決 1987年3月17日

主文

一  第一審被告の控訴を棄却する。

二  第一審原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  第一審被告は第一審原告に対し金五五八九万二九四七円及びこれに対する昭和五一年九月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  第一審原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを一〇分し、その九を第一審原告の負担とし、その余を第一審被告の負担とする。

四  この判決は、第二項1に限り、仮に執行することができる。

理由

一  当裁判所も、本件に適用されるべき準拠法は、本件契約、本件協定及び不法行為のいずれについても日本法であると解するが、その理由については、原判決二〇枚目表八行目「本件契約」の前に「《証拠略》によれば、第一審原告及び第一審被告は本件契約の準拠法をブルネイ法とすることを考慮したこともあることが認められるが、後記三で説示するとおり右甲第八三、八四号証は売買契約の草案であつて最終的に調印されたものではなく、」を加えるほかは、原判決がその理由一(原判決二〇枚目表二行目「一」から二一枚目表末行「である。」まで)において説示するところと同一であるから、これを引用する。

二  本件契約締結のための交渉の経緯についての判断は、左に訂正、付加するほか、原判決がその理由二(原判決二一枚目表一行目「二」から三三枚目裏末行「証拠はない。」まで)において説示するところと同一であるから、これを引用する。

1  原判決二一枚目裏三行目「原告が」から二三枚目表三行目「原告」までを次のとおり改める。

「請求原因ア(1)のうち、第一審原告がマレーシア国籍を有する実業家兼政治家であり、インドネシアにおいて種々の会社を通じ林業に関与していること及び同(2)の事実は当事者間に争いがなく、《証拠略》によれば、(1)のその余の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

《証拠略》」と改める。

2  同二三枚目裏二行目「事件」を「事業」と改め、同行目「である。」を「であり、ブルネイ法人インドの株式五万〇〇〇一株、同JKの株式二六〇一株、同カリマンタンの株式六〇〇一株を所有していた。」と改める。

3  同二三枚目裏六行目「ものである」の次に「(第一審被告が総合商社として、木材の輸入、販売を行ない、関連する合弁事業の実施等をも事業目的としていることは当事者間に争いがない。)」を加え、更に行をかえて次のとおり加える。

「第一審被告の会社内部においては、重要案件は毎週一回開催される代表取締役会(通称常務会)において審議され、長期に亘つて事前調査をしたり、条件を勘案しなければならない案件については、とりあえず方針禀議を提出し、その後金額等の諸問題がまとまつた段階で実行禀議を提出する段取りになつていた。」

4  同二四枚目表三行目「被告」の次に「の元社長水上達三」を、七行目「会合が」の次に「周東、劉らの立会のもとに」を各加え、一〇行目「(以下「ピィティ」という。)」を削り、同裏末行の「副部長」を「次長」に改める。

5  同二七枚目表三行目「(甲第一号証)が」の次に「当時木材部長代理であつた川原田道によつて」を、七行目「送付し」の次に「、第一審被告はそのころ異議をとどめることなくこれを受領し」を各加える。

6  同二八枚目裏一行目「なかつた」の次に「(右支払がなされなかつたことは当事者間に争いがない。)」を加える。

7  同三一枚目表七行目「なされていない」の次に「(金員の支払がなされていないことは当事者間に争いがない。)」を加える。

8  同三一枚目裏一〇行目「終つた。」の次に、行をかえて次のとおり加える。

「なお、第一審被告としては、右調査は費用も多額なものではなく、将来のためにもどのような林区であるかを知つておくことが資料として役立つという判断のもとに参加したものである。」

9  同三二枚目裏四行目「ピィティが、」の次に「右乙第一四号証には「第一審原告が釈放され次第」との記載があつたので対外的には具合が悪いとの理由で」を加える。

10  同三三枚目裏一〇行目「した。」を「し、本件契約等の締結を中止する旨を明らかにした。」と、末行「これに反する」を「原審証人アンドリュー・ピィティ、同ウィリアム・ウォン・キム・キッドの各証言中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を左右するに足りる」と各改める。

三  当裁判所も、第一審原告の主位的請求は理由がないものと判断するが、その理由については、左に付加、訂正、削除するほか、原判決がその理由三(原判決三四枚目表一行目「三」から同三九枚目表五行目「いうべきである。」まで)において説示するところと同一であるから、これを引用する。

1  原判決三四枚目表一〇行目「いつてもおかしくない」を「解されなくもない」と改め、裏一行目「できる」の次に「かの如くである」を加える。

2  同三四枚目裏五行目「河野圭一郎」から同三五枚目表四行目「疑わしい。」までを次のとおり改める。

「右甲第一号証記載の条項(1)(2)は確定的内容の条項ではあるが、(3)項には第一審被告が上記時期(昭和四九年四月三〇日)に買受株式の代金を支払うことについては取締役会の承認を待たなければならない旨の記載内容が含まれており、右取締役会の承認を第一審被告の単なる会社内部の問題にすぎないものとみることは困難であり、右(3)項にいう取締役会の承認は支払時期のみに関するものであり、四〇〇万米ドル支払の点についてはすでに承認ずみであつた旨の原審証人アンドリュー・ピィティの証言についても、なるほど同項の文言自体は同証人の供述する右趣旨にうけとれる面がないではないが、これを否定する《証拠略》もあり、結局右条項はその措辞、内容において明確を欠くものというほかはなく、四〇〇万米ドルの支払につきすでに承認ずみであつたとする点も右川原田、安井両名の証言と対比してにわかに措信し難いところであつて、他に四〇〇万米ドルの支払について取締役会の承認がすでにあつたことを認めるに足りる証拠もない。また、《証拠略》によれば、四〇〇万米ドルの支払についてはその後においても第一審被告の取締役会の承認を得ることができなかつたことが認められる。また、(4)項には「その他必要事項についての基本契約は一九七四年(昭和四九年)二月末日までに締結されるものとする」旨の記載があり、甲第一号証の書簡全体を通じてここに合意されていることは、必要な諸条件について合意が成立することを前提として、第一審被告においてブルネイ三社の株式の半数を四〇〇万米ドルで買い受ける意思のあることを確認するにとどまるものと解されるのであつて、右甲第一号証の書簡をもつて一義的・最終的な契約の申込みと解するのは困難であり、甲第二号証の書簡もその内容は、申込みを承諾する意思の表明のほかに、甲第一号証の(4)項についてはインドネシア株主の同意を決して求めるべきではない旨の記載があり、この点については当事者間に意見の一致がないことが表明されているのであつて、右甲第二号証の書簡をもつて甲第一号証の書簡に対する単純な承諾と解することはできない。

また、売買契約は諾成契約であるとはいえ、合弁事業に関連し金額も高額になる重要な契約については契約書を作成するのが通例であり、本件においても、前記二で説示したとおり、売買契約書、合弁事業契約書及び株主間契約書を作成すべく努力が重ねられていたのである。」

3  同三五枚目表四行目「現に、」の次に「原審」を加え、同裏一行目「認められる」から六行目「ない。」までを「認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。」と改める。

4  同三七枚目表三行目「である。」の次に、「更に、《証拠略》によれば、第一審原告は昭和五一年一〇月に第一審被告を相手取り、本件訴訟と実質的に同一請求に関する訴訟を香港の裁判所に提起し、その請求の原因として、本件契約の成立時期を甲第二号証の書簡の日付(昭和四九年二月六日)より約五か月後の同年七月一二日(甲第四号証及び同第五号証の日付)又はそのころと主張していることが認められる。結局、」を加える。

5  同三七枚目裏三行目「ならない。」の次に、行をかえて次のとおり加える。

「右のとおり、甲第一号証及び同第二号証によつては未だ本件契約の申込み及び承諾があつたものとは認められないのであるから、河野が右甲第一号証により本件契約の申込みをしたことを前提として、(ア)商法四三条二項、三八条三項、(イ)商法四二条、(ウ)民法一一〇条により、本件契約が成立したとする第一審原告の主張は、いずれもその前提を欠き、失当である。」

6  同三七枚目裏八行目「しかしながら、」の次に「右シンガポールでの会議以前に、合弁事業の内容の大綱についてさえ合意が成立していたことを認めるに足りる証拠はなく、」を加える。

7  同三八枚目裏八行目「足りない。」の次に、行をかえて次のとおり加える。

「第一審原告は、右シンガポール会議の後の現実の木材の売買、林区の調査、シンガポールでの事務所設営の事実により本件協定は追認されたと主張するが、右のとおりそもそも本件協定締結の事実は認められないから、無権限者による協定締結を前提とする追認の主張は、その前提を欠き失当である。また、第一審原告の右主張は、木材の売買等の事実を本件協定成立の間接事実として主張するものと解されるとしても、前記のとおり、右木材売買の量は少く、林区の調査も本格的な調査ではなく費用も多額ではないのであり、また、右事務所設営について第一審原告が第一審被告に同意を求めたり通知したことを認めるに足りる証拠はないので、いずれも本件協定の締結を裏づけるものとはいえない。」

四  次に、予備的請求について判断する。

1  第一審原告の予備的請求原因(1)の要旨は、契約締結交渉の経緯に照らし第一審原告が契約成立についての期待権すなわち契約締結の利益を有するに至つた場合には、第一審被告としてはこれを侵害しないように誠実に契約の成立に努力すべき信義則上の義務を負つているにも拘らず、第一審被告は、これを怠り、本件契約及び本件協定の締結とその履行を度々確言しながらも、後に至つて前言を飜し、本件契約等の締結を不可能ならしめ、第一審原告の右利益を侵害したというのである。

2  そこで、右主張について判断するに、信義誠実の原則は、現代においては、契約法関係を支配するにとどまらず、すべての私法関係を支配する理念であり、契約成立後においてのみならず、契約締結に至る準備段階においても妥当するものと解すべきであり、当事者間において契約締結の準備が進捗し、相手方において契約の成立が確実なものと期待するに至つた場合には、その一方の当事者としては相手方の右期待を侵害しないよう誠実に契約の成立に努めるべき信義則上の義務があるものというべきであつて、一方の当事者が右義務に違反して相手方との契約の締結を不可能ならしめた場合には、特段の事情がない限り、相手方に対する違法行為として相手方の被つた損害につきその賠償の責を負うべきものと解するのが相当である(最高裁判所昭和五八年四月一九日判決・最高裁判所裁判集民事一三八号六一一頁参照)。

これを本件についてみるに、契約締結交渉の経緯は前記二において説示したとおりであり、殊に前認定のとおり、第一審被告側において甲第一号証の書簡を第一審原告に送付するとともに甲第二号証の書簡を異議をとどめることなく受領したほか、前記二7の甲第五号証の作成、同11の甲第二一号証の作成、同12の和解申入れの事実等を総合すれば、第一審被告側が、前記甲第一号証の書簡を第一審原告に送付し、第一審原告から甲第二号証の書簡を受領した段階において第一審原告に本件契約及び本件協定が確実に成立するものとの期待を抱かせるに至つたものと認められるから、以後第一審被告としては本件契約及び本件協定の締結に向けて誠実に努力すべき信義則上の義務を負うに至つたものというべきであり、右契約等締結の中止を正当視すべき特段の事情のない限り右締結を一方的に無条件で中止することは許されず、あえて中止することによつて第一審原告に損害を被らせた場合にはこれを賠償する責を負うべきである。

この点について、第一審被告は、本件契約が成約に至らなかつたのは、インドネシア少数株主同意問題について第一審原告と第一審被告との間において了解が得られなかつた故である旨主張する。

しかしながら、《証拠略》によれば、第一審被告の木材部門は昭和四九年三月期においては利益を計上したのに同年九月期には損失を計上するに至り、本件契約締結の交渉中に木材取引の利益の見込みが薄くなつたことが認められ、第一審被告としては木材市況など経済情勢の変動のために本件契約及び本件協定締結の意欲が急速に減退したことがうかがわれること並びに前記甲第八四号証(株式売買契約書)には第一審原告は株式売買完了後第一審被告とインドネシア側当事者との会議を手配する旨の条項(一三条a項)があることに照らすと、第一審原、被告が本件契約及び本件協定を締結するに至らなかつた主な理由がインドネシア少数株主同意問題についての合意が得られなかつたことにあるものとは認められない。

もつとも、前記二の8、10、12で認定したとおり、第一審原告は昭和四九年一〇月三〇日公共治安維持規則に基づきマレーシア官憲に逮捕され、タイピン拘禁所に拘禁され、昭和五〇年三月一〇日人身保護令状によつて一旦釈放されたが、同日内国治安維持法に基づき再び逮捕され、タイピン拘禁所に拘禁され、昭和五一年一月三一日、住居制限付きではあるが、漸く拘禁を解かれた。第一審原告は、右逮捕拘禁は政治的なものであつて不当であると主張するのであるが、その理由はともかくとして、第一審原告は本件契約及び本件協定の当事者であるのみならず、合弁事業の中心人物となることが予定されていたのであり、このような重要人物が官憲により逮捕され長期間に亘り拘禁されるということは、合弁事業の将来に不安を抱かせるものであり、このことも第一審被告において合弁事業を目的とする本件契約及び本件協定を締結することを中止するにいたつた一因とみられなくもないが、その主たる理由はあくまで前示のとおり木材市況の低落にあつたものというべきであるのみならず、前記二13で認定したとおり、第一審被告は第一審原告の右拘禁にかかわりなく、昭和五一年五月末に漸く本件契約及び本件協定を締結する意思のないことを明確に表明するに至るまでの間、終始、第一審原告に対し右契約等が確実に成立するものとの期待を抱かせる態度をとり続けていたのであつて、他に第一審被告が右締結を中止したことを正当視すべき特段の事情も認められないから、前記甲第一号証、第二号証の交換により第一審原告をして本件契約及び本件協定の締結について期待を抱かせるに至つた昭和四九年二月から明確に右締結中止の態度を示した昭和五一年五月末までの間に第一審原告が本件契約及び本件協定の成立を期待したことにより被つた損害につき、第一審被告はこれを賠償すべき義務があるものというべきである。

3  次に、損害賠償額について判断する。

(一)  第一審原告の主張するブルネイ法人三社の株式の売却損(予備的請求の請求原因(3)の(ア)(イ)の損害)については、本件契約及び本件協定の締結前に第一審原告において他に処分することができないとの拘束を受けることは右契約等の目的、趣旨からして当然の帰結であるから、右契約等の締結後にこれが破棄された場合は格別、本件においては前示のとおり右契約等は成立するにいたらなかつたものであるから、右損害は右契約等の成立前における第一審被告の義務違反と相当因果関係のあるものとは認め難い。

(二)  第一審原告が本件契約及び本件協定締結に関して負担した費用(同(ウ)の損害)について判断する。

《証拠略》によれば、第一審原告及び第一審被告は契約締結に要した費用は各自の負担とする意図であつたことがうかがわれるが、右の意図は契約が成立した場合のことであつて、契約が不成立に終つた場合については同様に取り扱うわけにはいかないものと解される。

《証拠略》を総合すれば、第一審原告は昭和四九年二月から昭和五一年五月末までの間に、交通費、宿泊費等として七万四四二二・三四シンガポールドル(甲第七七号証のE表のうち右期間中の出捐分)を、通信費として二一九九・八シンガポールドル(甲第七七号証のC表の全額及びD表のうち右期間中の出捐分)をそれぞれ出捐し、本件契約及び本件協定締結交渉に関して第一審原告の代理人ピィティに合計三一万〇七五〇シンガポールドルを報酬として支払つたこと、以上の合計三八万七三七二・一四シンガポールドルは、第一審原告が本件契約及び本件協定締結の準備、交渉のために出捐したものであることが明らかであつて、右契約等の成立を期待して支出したものであるのみならず、右交通費、宿泊費、通信費等の費用は取引上通常必要とされるものであり、ピィティに支払つた右報酬も国際取引において外国の業者が代理人を立てることは異例のことではないとみられることにかんがみ、これらの支出はいずれも第一審被告の前記義務違反と相当因果関係にある損害に当るものというべきである。

《証拠略》によれば昭和五一年九月当時の交換率は一シンガポールドルが一一七・七七円であることが認められるから、右損害は四五六二万〇八一六円(円未満切捨て)となる。

(三)  第一審原告が本件協定に関して負担した費用(同(エ)の損害)について判断する。

《証拠略》によれば、第一審原告は合弁事業のために昭和四九年四月から昭和五二年九月まで事務所としてシンガポール所在のインターナショナルビルディングE九号室及びH八号室を借り入れ、その賃借料その他の経費を支出したが、そのうち昭和四九年四月から昭和五一年五月までの分は合計三万六八八三・八〇シンガポールドル(内訳は、E九号室の賃借料三五八四シンガポールドル、H八号室の賃借料二万七〇四〇シンガポールドル、その他の経費六二五九・八〇シンガポールドル)であることが認められ、前記のとおり昭和五一年九月当時の交換率は一シンガポールドルが一一七・七七円であるから右金額は四三四万三八〇五円(円未満切捨て)となり、また、林区の調査費用は二六五万二三六二・二〇ルピアであることが認められ、弁論の全趣旨によれば昭和五一年九月当時の交換率は一ルピアが〇・三五円であることが認められるから、右金額は九二万八三二六円(円未満切捨て)となる。右の損害も前項と同旨の理由によりいずれも第一審被告の前記義務違反と相当因果関係のある損害であることが認められる。

(四)  第一審原告の名誉、信用が毀損されたことによる慰藉料及び共同事業契約が履行された場合の第一審原告が得べかりし利益の喪失(同(カ)(キ)の損害)は、仮にそのような損害が生じたとしても、本件契約等の締結後にこれが破棄された場合は格別、本件のような契約等の準備段階においては、第一審被告の前記義務違反とその因果関係において相当性を欠くものというべきである。

(五)  第一審被告は第一審原告に対し右(二)及び(三)の合計五〇八九万二九四七円を支払うべき義務があるところ、第一審被告は賠償責任はないものと主張して任意に支払わないため、第一審原告が弁護士に本件訴訟の提起及び追行を委任したことは本件記録上明白であり、本件訴訟の訴額、認容額等事案の内容にかんがみ、第一審被告の賠償すべき弁護士費用は右認容額の約一割に当たる五〇〇万円をもつて相当と認める。

4  以上の次第で、信義則上の義務違反を理由とする第一審原告の予備的請求は、前記損害(二)、(三)、(五)の合計五五八九万二九四七円及びこれに対する第一審被告が第一審原告との本件契約等の締結を中止することが確定的となつたときより後である昭和五一年九月八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がないものというべきである。

五  よつて、その余の争点について判断するまでもなく、第一審原告の本訴請求のうち、主位的請求は理由がないから棄却し、予備的請求は金五五八九万二九四七円及びこれに対する昭和五一年九月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却すべく、右判断と一部結論を異にする原判決を主文第二項のとおり変更し、第一審被告の控訴は理由がないからこれを棄却し、民事訴訟法三八四条、三八六条、九六条、八九条、九二条、一九六条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中村修三 裁判官 佐藤栄一 裁判官 篠田省二)

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